お箸を作る材料(天然木と漆)

●天然木について
【お箸を作るのにつかわれている木】

一言に木と言っても、お箸の産地や作り方も様々で素材も変わってきます。 ほとんどの箸は”天然木”としか表記されていませんがこの場合の多くは の鉄木やマラスと呼ばれている木で小浜で作られている箸の多くはこれを使用しています。


他の代表的な産地は
津軽塗・・・・
青森桧葉、山桜
木曽塗・・・・
輪島塗・・・・
あすなろ
江戸箸・・・・
黒檀、紫檀
別府・・・・
煤竹、白竹、虎竹、ゴマ竹
他にも
杉、松、柚子、桑、楓、黒柿、欅、青黒檀、本黒檀、縞黒檀、本紫檀、紅木、つげ、南天、白南天、スネイクウッド、ピンクアイボリー、鉄刀木、ウェンジなどがあります。 特殊な素材としては、積層材、象牙、銀、ステンレス、チタン、ガラスなどもあります。


【素材の特徴】
[マラス]
原産地(ニューギニア等) 別名”ナンテンギリ”ともいわれ強度と耐久性に優れ、最も多く箸の材料として取り入れられています。
[鉄木]
原産地(ベトナム、カンボジア、インドネシア) 硬くて丈夫で耐水性にも優れており、お箸に適した材料です。
[桧葉(ヒバ)]
原産地(北海道南部から九州、北米等) 「明日ヒノキになろう」の意味で翌檜(あすなろ)ともよばれています。 軽く、柔軟なため加工もしやすい材料です。輪島の塗り箸によく使われています。
[檜]
原産地(本州中部より四国、九州、屋久島) 日本特産の種で特有の芳香を放ちます。軽く、耐水性もよく加工がしやすい材料です。 木曽産のものが有名で木曽の塗り箸によく使われます。
[山桜]
原産地(本州、四国、九州、朝鮮、北米等) 加工がしやすく狂いが少ないのが特徴です。やわらかな明るい色合いは女性にも人気が高く、妊婦が桜の枝を持つと安産祈願となると言われています。
[杉]
原産地(日本各地) 軽く柔らかいので加工が容易です。木目に沿って縦に割れやすいので割りばしに使われ、特に吉野杉はその名が有名です。 日本人に馴染み深い木材の一つです。
[ブナ]
原産地(日本各地) 日本の広葉樹で山奥に原生林を広げるポピュラーな樹種の一つです。重硬ながら狂いやすい材質ですが様々な用途に広く使われています。
[楢]
原産地(日本各地) 重硬で割れやすいので加工が困難とされていますが、虎の毛のような大きな斑点模様(虎斑)を有する美しいものもあります。
[栃]
原産地(日本、中国など) 軽くて柔軟性があり加工がしやすい材料の一つです。木肌も緻密で縮杢という美しい木目の模様が魅力的です。
黄肌
原産地(日本各地、樺太、韓国、中国など) 比較的軽量ですが適度な硬さを保ちます。最大の魅力はその光沢と非常にきれいな杢目です。
[朴の木]
原産地(日本各地、朝鮮、中国など) 軽く、やわらかいので加工がしやすい材料です。漆器や建築の装飾など幅広く使われています。
[一位]
原産地(日本各地) 木目が細かく美しい銘木です。アイヌの木彫りや岐阜県高山の一刀彫りなどで有名です。 語源は仁徳天皇がこの木で笏を作らせた際、他のどの材よりも美しかったため「正一位」を授けたことに由来すると伝えられています。
[槐(えんじゅ)]
原産地(日本各地、中国、朝鮮、台湾など) 比較的重硬で年輪は美しく磨くことによって光沢が出るので建築装飾や家具など幅広く活用されています。日本では「延寿」という字があてられ寿命を延ばす縁起の良い木として親しまれています。
[青黒檀]
原産地(タイ) 非常に入手が困難な材料です。油分が多く、滑らかで手に吸い付くような持ち心地が味わえます。製材したては緑色ですが次第に酸化して真っ黒になります。
[本黒檀(別名:真黒)]
原産地(インド、スリランカ) ほとんど入手が不可能です。インド産のものが極上品とされ通称”インドマグロ”とも呼びます。その持ち心地、重量感、ツヤは素晴らしく存在感のある材料です。
[縞黒檀]
原産地(インドネシアなど) 良材は年々減少していますが産地が広域で比較的手に入りやすい材料です。黒檀類で最も硬質で加工は困難ですが、箸の材料としては最高の素材といえます。
[紫檀]
原産地(タイ、インド、ブラジルなど) 黒檀とは対照的にツヤのある明るい茶褐色が魅力的な材料です。硬さにも定評があります。やはり、良材は入手が困難になっています。
[紅木]
(インド、マドラス地方) 紫檀の中でも最も入手が困難です。奥深い赤紫色が魅力的な材料です。
[黄楊(つげ)]
原産地(伊豆七島、鹿児島等) 黄白色、黄褐色と柔らかい肌色とは裏腹に重厚な材質が美しい逸品です。
[栗(クリ)]
原産地(日本、朝鮮など) 年輪がはっきりとしているので、すり漆によって木目をはっきりと浮かび上がらせます。タンニンが多く年月を経ると黒っぽくなっていきます。弾力性がありますが固いので加工は困難です。
[黒柿]
原産地(日本、中国) 樹齢を重ねた柿の木でまれに黒い縞杢を有する美しい稀少な材料です。柿の木の組織が内部の微生物や土壌の金属に影響を受けて出来る模様が独特の風合いを醸し出します。
[鉄刀木(タガヤサン)]
原産地(タイ、インド、ミャンマーなど) 黒檀や紫檀とともに代表的な唐木です。肌目はやや粗いですが硬く耐久性があり磨くことによって美しい光沢を放ちます。
[桃色象牙(ピンクアイボリー)]
原産地(アフリカ) スネイクウッドに次ぐ高級材。重厚感があり木肌から放たれる上品なピンク色が最大の魅力です。
[蛇紋木(スネイクウッド)]
原産地(ベネズエラ) 全木材中最も入手が困難な材料です。木材の中でも最も硬く鋼の帯鋸の歯もしばしば折れるほどの硬度を誇ります。 ヘビ柄の独特な木目は世界一高級な木材の王様というにふさわしいどっしりとした品格を醸し出しています。
[煤竹]
煤竹とは薫煙された竹のことで一般的な竹材に比べて硬く丈夫な材料です。古い日本家屋の囲炉裏などで長期にわたり自然に燻されたものを特に本煤竹といいその独特の飴色の色合いもとても魅力的です。現在では日本家屋の減少に伴い、とても希少な材料です。
[象牙]
密度が高く切削加工しやすい素材として珍重された。特にその重量感と温かい風合いは、多くの人に好まれてきました。      乱獲等により1989年以降ワシントン条約で輸入が禁止されたためその希少性も高く、その風合いと品質は箸の材料の中でも最も高級感のあるものです。
●漆について

漆とは漆の木から採取した樹液の事を言います。 この樹液を使って器物を造ったり、塗ったり様々な加飾を行う工芸が漆芸です。 日本では、細かい加工に適したとても硬質な優れた漆が採取できます。 加えて素地となる木材が豊富にある気候、風土に恵まれ、特に漆芸が発展してきました。

日本の漆芸は他の国に類を見ない多様な技術を持って高度な展開を示してきました。 欧米人にとっていかに印象的であったかは陶器の事を「チャイナ」、漆器の事を「ジャパン」と呼ばれていることからもわかります。 箸は日本人にとって最も生活に溶け込んだ身近な漆器であるといえます。


【漆の優れた特性】

漆の歴史は古く、縄文時代に遡ります。青森県の是川遺跡からは漆を使用したものが出土しており古代より様々な用途に使われていました。

その漆の持つ効果は

  • 酸、アルカリ、塩分に強い。完全に乾燥すると塩酸、硫酸にも溶けません。
  • 防水、防腐性、防虫性があり抗菌作用も認められています。
  • 保湿性に優れ、熱の伝導性が低いので熱いものを入れても器が熱くなりません。
  • 錆び止めの効果があります。
  • 接着効果があり、法隆寺や金閣寺でも使われています。
  • 漢方では気を休める働きがあるといわれています。
こうしたことから、漆は優れた天然の塗料として、接着剤として日本人の生活の中に取り入れられてきたのです。


【お箸の塗装について】
[漆塗りの技法]

漆の塗り方は木目の美しさや色合いをそのまま見せる透明な漆膜の仕上げの塗り方(拭き漆)と木肌を覆い隠し塗り、研ぎを何回も繰り返して漆特有の滑面にする型があります。 木箸は前者の拭き漆の技法を用います。木材に生漆を吸い込ませ、木目の美しさを引き立たせ皮膜で丈夫にします。 漆液を素地に何度も摺り込み、吸い込ませては拭きとるという作業を何回も繰り返す職人技を必要とします。

一方、塗り箸は朱や黒の色漆の塗り膜で木を覆うため素地は分りませんが、表面を磨いて層を浮き立たせる技法や、その美しい塗肌に蒔絵・沈金・螺鈿などの加飾 を施したりされることでより多彩な表情を生み出すことが出来、使う人を楽しませてくれます。

[漆以外の塗装]

戦後の工業化、都市化の中で優秀な漆工、良質な日本産の漆が激減し、価格の高騰を招いたことなども要因となり現在では輸入品の中国漆が主力となっています。 さらには高品質な化学塗料が開発され、人口漆(化学樹脂塗料)が盛んに使われています。 化学樹脂塗料はコスト面でお箸の生産に貢献して様々な種類のバラエティーに富んだお箸作りを実現しました。

塗り箸は直接口につけるものなので食品衛生法・食品、添加物等の規格基準の検査をうけなければなりません。 個別に規格された以外の合成樹脂の器具又は容器包装により人間に有害な影響を及ぼす塗料の使用は一切禁止されています。 使用されている塗料が検査項目の基準値以内であれば法的には何も問題がありませんが家庭用品品質表示義務法により素材の種類や塗装の種類、製造元及び発売者を表示しています。

天然漆の商品や塗装を行っていない竹・木に関しては自然素材のため食品衛生法検査義務の対象外となっています。